ヘンケルと化学業界の5社は2011年に、 「サステナビリティのための協力―よりよい世界を目指す化学サプライチェーン」(Together for Sustainability—Chemical Supply Chains for a Better World:TfS)イニシアチブを共同で立ち上げました。このイニシアチブは、国連グローバル・コンパクトの原則と 国際化学工業協会協議会(ICCA)の「レスポンシブル・ケア」イニシアチブを基盤としています。TfSは、複雑化するサステナビリティ関連のサプライチェーン管理プロセスの調和を図り、世界中のビジネスパートナーのつながりを最適化することを目的としています。とりわけ、相乗効果が生まれることによって、加盟企業間だけでなく、すべての共通サプライヤーとの間においても、資源をより効率的に使用できるようになり、管理業務を最小限に抑えることができます。
このイニシアチブの主軸となるのは、「1社の監査は全社の監査」という考え方です。サプライヤーは、1件の評価または1件の監査を受けるだけです。監査は、多数の厳選された独立監査法人によって行われます。オンライン評価の場合、TfSはサステナビリティパフォーマンス評価の専門家であるEcoVadisと連携します。マネジメント、環境、安全衛生、労働と人権、倫理的な企業ガバナンスなどの分野についてパフォーマンスが評価されます。2023年には、TfSは約17,900件のアクティブなTfS評価および監査を実施しました。同年に約2,830社のヘンケルのサプライヤーがTfSの評価または監査を受けました。近年、TfSイニシアチブは目覚ましい成長を遂げており、国際的に事業を展開する化学メーカーもメンバーに加盟しています。
2022年には、スコープ3排出量の算定に関する「化学産業のための製品カーボンフットプリント(PCF)ガイドライン」が発表され、TfSイニシアチブは大きく前進しました。まず、スコープ3排出量の算定に関する「化学産業のための製品カーボンフットプリント(PCF)ガイドライン」が発表されました。この版ガイドラインには、化学産業の特殊性を踏まえた既存のPCF算定アプローチが集約されています。これによって将来的には、企業や産業用顧客、コンシューマーが、製品による気候への影響を直接比較し評価できるようになります。TfSイニシアチブにとってもう一つの重要な要素は、TfSアカデミーです。同アカデミーは、サプライチェーンにおけるサステナビリティをテーマにした個別学習・スキル習得プラットフォームで、TfSメンバー企業とそのサプライヤーに継続的な教育機会を提供しています。
2020年9月、TfSは新たな戦略的枠組み「TfS Grow&Deliver」を立ち上げました。この新戦略は、これまでの実績を踏まえたものであり、TfSの測定に特化したイニシアチブから、明確な影響をもたらす共同体へとTfSの方向転換を図るものです。TfSの会員は引き続き、より高い基準の推進と、評価や監査で収集されたインサイトおよびデータの改善に取り組みます。これによりTfSは、サステナビリティに最大の潜在的影響をもたらすテーマや分野についてサプライヤーを訓練することができます。またTfSは、中国やインドなど、新興市場での活動を拡大していきます。協調的行動は、新戦略のもう1つの基本要素です。TfSはこのようにして、サステナビリティに対する貢献をさらに拡大しようとしています。これに加えて、TfSコミュニティの育成も、TfSの目標達成を可能にするもう1つの重要な要素です。