責任ある調達

企業のサプライチェーンはきわめて重要な資源です。サプライチェーンの全段階で企業が連携することにより、全体的な環境への影響を最小限に抑え、社会へのプラスの影響を最大化するチャンスが大きく切り開かれます。ヘンケルのグローバルサプライチェーンは、120カ国以上のビジネスパートナーにより構成されています。ヘンケルはこれらのパートナーとともに、100%の責任ある調達に向けて前進したいと考えています。

責任ある調達によって意義ある成長を実現する

ヘンケルは、責任ある調達を目指す主要なアプローチのもと、人々と地球のために、サプライチェーン全体でサステナビリティを推進することにより、意義ある成長の実現を目指しています。そのために、持続可能な慣行と人権の尊重を推進すべく、サプライヤーとの対話と連携を図っています。ヘンケルのミッションは、単なるコンプライアンスの枠を超え、バリューチェーン全体にわたりインパクトを与え、変革を起こし、お客様のためにサステナブルな価値を創造することです。

100%の責任ある調達戦略は、すべての地域、事業部、材料グループにおいて100%の責任ある調達決定をグローバルで行うという私たちの目標を強調しています。この戦略的枠組みは、ヘンケルの強固なリスクマネジメントおよびコンプライアンスアプローチの上に構築されています。これは、ヘンケルの意義ある成長戦略の主要な側面を反映するとともに、サステナビリティの3つの注力分野である「クライメート・ポジティブの実現、「循環型経済」、「社会の発展」を、責任ある調達アジェンダの中心に据えています。これらの注力分野におけるヘンケルの貢献は、100%の責任ある調達の実現に向けて、「コラボレーション」、「トランスフォーメーション」、「イノベーション」、「エンパワーメント」という4つの主要な戦略によって促進されます。

ヘンケル グローバルサプライチェーン 統括兼 購買担当コーポレート上級副社長のベルトラン・コンケレの画像

   

私たち購買部門は、ヘンケルの意義ある成長アジェンダのもと、野心的な目標「100%の責任ある調達戦略」に全力で取り組んでいます。

ヘンケルの基盤:リスクマネジメントとコンプライアンス

ヘンケルの強固なリスクマネジメントおよびコンプライアンスアプローチの主な目的は、サステナビリティリスクに基づいたサプライヤー評価を行うことにより、情報に基づく意思決定を可能にし、リスクを軽減・管理するとともに、サプライヤーのサステナビリティパフォーマンスを評価、および強化することです。この戦略的なアプローチの焦点は、リスクのデューデリジェンス、方針と基準、サプライヤーのコンプライアンス、ならびにサプライチェーンの透明性とトレーサビリティにあります。

現在、ヘンケルは120カ国を超えるビジネスパートナーを有しており、世界中のすべてのビジネスパートナーに対して一律に高い要件を設定し、当社のサステナビリティ要件に即した企業行動を求めています。また、ビジネスパートナーを選定し、協力するにあたっては、安全、健康、環境、社会基準、公正な事業慣行に関するパフォーマンスも考慮しています。これは当社のSafety, Health and Environment Standards(安全衛生・環境基準)に基づくものです。当社の調達基準も引き続き適用されます。最高調達責任者(CPO)は、すべての調達活動および責任あるサプライチェーン管理の維持に対する責任を負い、最高財務責任者(CFO)に直属しています。

 

ヘンケルは、世界中の全サプライヤーに対して、ドイツの材料管理・調達・物流協会(BME)によるクロスセクター向け行動規範の遵守を義務付けています。BMEの行動規範は国連グローバル・コンパクトの10原則に基づいて定められており、国際的な適用が可能です。当社が戦略的サプライヤーと契約関係を結ぶ際は、Responsible Sourcing Policy (責任ある調達ポリシー)に加えてこの行動規範を基盤としています。また、調達・供給サイクルに適用されている責任ある調達ポリシーについては、2023年に改訂を行い、サプライチェーンのデューデリジェンスに関する特定の要素を追加しました。

ヘンケルの戦略的アプローチ

「100%の責任ある調達戦略」に基づき、ヘンケルでは2030+ Sustainability Ambition Framework(2030 年以降の意欲的なサステナビリティフレームワーク)である「地球環境の再生」、「地域コミュニティの繁栄」、「信頼されるパートナー」という観点を調達アジェンダの中心に据えています。これを実現するため、以下の分野に注力しています。

  • 私たちは、サプライチェーンにおける温室効果ガス排出量を削減し、循環型の調達ソリューションを展開し、自然と生物多様性を保護することで、クライメート・ニュートラルな未来を共に実現します。
  • 私たちは、すべての活動において人権を尊重し、サプライチェーンに携わる人々のエクイティ(公平性)、教育、ウェルビーイング(幸福)の向上を支援することによりサステナブルな行動を促していくことを約束します。
  • 私たちは、サプライチェーンの機能を強化しその透明性と持続可能性を共に高めていきます。そして、サプライヤーやパートナーと連携して変革を進め、サステナブルなビジネスの価値を創造します。

ヘンケルは、上記の調達方法でサステナビリティへの戦略的取り組みを進めるにあたり、数多くの指標を収集して価値創造への寄与度を測定し、戦略的な外注判断の根拠として利用しています。

ヘンケルの戦略的成功要因

「100%の責任ある調達戦略」を実現するためには、コラボレーション、トランスフォーメーション(変革)、イノベーション、エンパワーメントが重要な成功要因となります。私たちは、ビジネスパートナーや主要なステークホルダーとの社内外における連携を強化することにより、取り組みを加速させています。ヘンケルはグローバルな調達体制を持っているため、各事業部門や管理部門のサステナビリティ戦略を責任ある調達アジェンダと完全に統合することによって、変革を推進することができます。さらにヘンケルは、サステナブルなイノベーションに注力してデジタルソリューションの革新を促すとともに、能力構築の機会を設け、社内外のステークホルダーに対するエンパワーメントを行うことにより、100%の責任ある調達への意識改革を進めていきます。

戦略的サプライヤーおよびパートナーとの協力

現在ヘンケルでは、2025年以降のサステナビリティ目標の達成に向けて、サプライヤーと共通の計画を策定・実践することに重点を置いています。私たちはサプライヤーと連携し、さまざまなプラットフォームやフォーラムを活用して、持続可能な製品と技術の分野で先駆的なイノベーションを創出しています。

ヘンケルは、持続可能な調達方法を推進するためのツールとして、戦略的サプライヤーとの間に具体的な目標を盛り込んだ契約を結んでいます。また、リスク管理アプローチの一環として、上流サプライチェーンのサステナビリティリスクに関する透明性の向上に継続的に取り組んでいます。そのため、原材料や包装材などを供給する一部のサプライヤーに対しても、ヘンケルに供給される製品ポートフォリオの排出レベルについて透明性を確保するよう求めています。この気候コミットメントプログラムの参加対象となるサプライヤー全体で、当社のスコープ3.1のフットプリントの50%以上を占めています。2023年には、サプライヤーから調達した原材料について、2,500を超える製品カーボンフットプリントのデータポイントを検証し、この情報を重要なデータソースとして社内で利用できるようにしました。2024年には、製品カーボンフットプリントのデータポイントを6,000超にまで拡大しました。

また、2024年には「ヘンケルクライメートコネクト」を開始しました。これは、上位の排出企業や直接材以外にも、気候関連のサプライヤーエンゲージメントや排出量データ収集の対象を拡大することを目的とした、グローバルな調達イニシアチブです。ヘンケルはこのイニシアチブを通じて、サプライヤーの排出量を体系的に把握、検証、削減するとともに、サプライチェーン全体で、各サプライヤーが当社のネットゼロ目標に沿って排出量削減に積極的に貢献することを期待しています。私たちは、以前から参加している「サステナビリティのための協力(Together for Sustainability:TfS)」とのパートナーシップおよび新たに立ち上げた「ヘンケルクライメートコネクト」を通じて、サプライヤーの気候移行能力を向上させるための支援と研修用のリソースを世界規模で提供しており、サプライヤーごとのさまざまな成熟度レベルに対応しています。

2022年には、バリューチェーンのサステナビリティ強化に向けた重要な取り組みとして、ドイツ銀行の協力の下、サプライヤーのサステナビリティパフォーマンスと、欧州の既存のサプライヤー融資プログラムとの紐づけを行いました。すでにドイツ銀行のサプライチェーン融資を受けている欧州のサプライヤーは、EcoVadisの評価に基づいてより良い融資条件を享受することができます。サプライヤーのESG評価が改善し続けると、融資金利は徐々に引き下げられます。これにより、5つの地域のサプライヤー融資プログラムすべてがサステナビリティ基準に紐づけられたことになります。ヘンケルは、サプライチェーンの対象範囲をさらに拡大するため、他の国々についても必要に応じてこれらのプログラムに順次統合していく予定です。

 

 

調達活動に不可欠な要素としての責任ある調達プロセス

6段階の「責任ある調達プロセス」は、戦略的なリスクマネジメントとコンプライアンスアプローチの核となる要素です。ここでは、リスクを特定することと、リスクを最小化する適切な方法を見極めることを重視しています。サプライヤーによるサステナビリティパフォーマンス評価を活用することで、透明性を確保しています。そしてサプライヤーと協力しながらバイヤーを支援し、バリューチェーンにいける継続的な改善につなげています。主に、プロセス最適化、資源効率、環境・社会的基準についての知識転換や能力構築をベースとして、こうした継続的な改善プロセスを実施しています。このプロセスは、ヘンケルのすべての調達活動にとって不可欠な要素です。この6段階のプロセスは、包装、原材料、外部委託製造の分野における当社調達量の約97%をカバーしています。

 

 

ステップ1:事前チェックおよびリスク評価

サプライチェーンにおけるサステナビリティリスクを評価するこのアプローチは、グループ全体のリスクマネジメントシステムの一環として実施されています。地域や国ごと、そしてバリューチェーンごとに、業界特有のリスクも含めて潜在的リスクを評価します。その際、国際機関によってサステナビリティリスクのレベルが高まっていると指摘されている国には特に注意を払います。評価には、「人権」、「環境」、「汚職」に関する基準が含まれています。 

サステナビリティリスクをもたらす材料に関連したリスク国の最近の例として最もよく知られているのは、コンゴ民主共和国(DRC)の東部州です。この地域では、さまざまな軍や反政府組織、外国勢力が採掘により利益を得るとともに、紛争下で暴力や搾取をはたらいています。コンゴ東部とその近隣諸国で採掘される4種類の鉱物は、「紛争鉱物」と呼ばれています。これはコロンバイト-タンタライト(タンタル石)、キャシテライト(錫石)、ウルフラマイト(タングステン鉱石)、および金のことで、3TGとして知られる金属(タンタル、錫、タングステン、金)を生産するために使用されます。

紛争に関与していないサプライチェーンを確保することは、ヘンケルの責任ある調達方針において不可欠な要素です。私たちは、OECD 紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンスに則り、適切なサプライチェーン・デュー・ディリジェンスを実施しています。サプライヤーに対しては、紛争鉱物に関して適用される法的枠組み(OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス、EU規則およびドッド・フランク法等)の要件に沿った対応を求めています。サプライヤーは、調達したすべての資源が紛争に関与していないことを証明する書類を提出しなければなりません。ヘンケルは製錬業者と直接的な取引を行っていないことから、サプライヤー自身でこれらの業者と連携して紛争に関与していない根拠を示す必要があります。つまり、責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)またはその他OECDが認定するビジネスイニシアチブによって確認されている調達元のみを使用することが、サプライヤー取引の条件です。

ステップ2:オンボーディング

事前チェックとリスク評価の結果は、次にサプライヤーオンボーディングのプロセスへと送られます。ヘンケルはサプライヤーに対し、ヘンケルのサプライヤー行動規範および責任ある調達方針に同意することを求めています。ヘンケルのオンボーディングプロセスは、世界的に統一された登録システムに組み込まれており、ヘンケルのサステナビリティ要件を標準化して要約したものです。

ステップ3:初期評価または監査

新たな取引関係を開始するにあたり、新規のサプライヤーは、既存のサステナビリティパフォーマンスの結果を開示するか、あるいは、サステナビリティパフォーマンスについての透明性を確保したアンケートに回答することを求められます。この評価アプローチは、サステナビリティパフォーマンス評価のスペシャリストであるEcoVadisが開発した評価手法を用いており、外部調達に関わる取引先のほとんどに適用されます。このアンケートは、安全、健康、環境、品質、人権、社員基準、および汚職防止の分野における事項を網羅しています。

2021年には、調達規模が比較的小さいサプライヤーを対象として、サービス型ソフトウェアソリューションIntegrityNextを導入しました。このソフトウェアソリューションは、サステナビリティパフォーマンスやリスクに関する簡単な自己評価アンケートに基づいています。 

特定のサプライヤーは、評価に加えて監査を受けます。このプロセスでは、ヘンケルが独立監査企業と協力し、監査で定義された基準への準拠を確認します。ヘンケルの監査は、現場視察(生産拠点など)で構成され、工場の視察と全階級の社員との面談の両方を含みます。

ステップ4:パフォーマンス評価の分析

外部のサステナビリティ専門家、およびヘンケルの購買チームのサプライヤー担当者が、監査結果またはEcoVadisによる評価の結果を分析して、サステナビリティに関する弱点や改善すべき分野を特定します。それと同時に、サプライヤーはそれぞれ異なるサステナビリティリスクレベルに分けられます。評価または監査後に標準化されたプロセスを踏むことによって、サプライヤーは定められた是正措置を正しく実行することができます。重大な不履行を繰り返した場合は、定められたエスカレーションプロセスによって対処され、そのサプライヤーとの取引関係は解除されます。

ステップ5:是正措置と継続的な改善プロセス

監査や評価の結果とは別に、評価対象のサプライヤーに対して、是正措置計画を作成して定められた改善分野に取り組むことを求め、再評価や再監査までの間、サプライヤーとともに是正措置計画の実行の進捗状況を確認します。

ステップ6:再評価/再監査

再評価または再監査の繰り返しによってサプライヤーのパフォーマンスの進捗を監視し、評価、分析、是正措置からなる継続的な改善サイクルを確保します。その結果として得られるサプライヤーのサステナビリティパフォーマンスの進展に関する透明性の高い情報には、デジタルプラットフォームを通じてリアルタイムにアクセスすることができます。

ステップ1:事前チェックおよびリスク評価

サプライチェーンにおけるサステナビリティリスクを評価するこのアプローチは、グループ全体のリスクマネジメントシステムの一環として実施されています。地域や国ごと、そしてバリューチェーンごとに、業界特有のリスクも含めて潜在的リスクを評価します。その際、国際機関によってサステナビリティリスクのレベルが高まっていると指摘されている国には特に注意を払います。評価には、「人権」、「環境」、「汚職」に関する基準が含まれています。 

サステナビリティリスクをもたらす材料に関連したリスク国の最近の例として最もよく知られているのは、コンゴ民主共和国(DRC)の東部州です。この地域では、さまざまな軍や反政府組織、外国勢力が採掘により利益を得るとともに、紛争下で暴力や搾取をはたらいています。コンゴ東部とその近隣諸国で採掘される4種類の鉱物は、「紛争鉱物」と呼ばれています。これはコロンバイト-タンタライト(タンタル石)、キャシテライト(錫石)、ウルフラマイト(タングステン鉱石)、および金のことで、3TGとして知られる金属(タンタル、錫、タングステン、金)を生産するために使用されます。

紛争に関与していないサプライチェーンを確保することは、ヘンケルの責任ある調達方針において不可欠な要素です。私たちは、OECD 紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンスに則り、適切なサプライチェーン・デュー・ディリジェンスを実施しています。サプライヤーに対しては、紛争鉱物に関して適用される法的枠組み(OECDデュー・ディリジェンス・ガイダンス、EU規則およびドッド・フランク法等)の要件に沿った対応を求めています。サプライヤーは、調達したすべての資源が紛争に関与していないことを証明する書類を提出しなければなりません。ヘンケルは製錬業者と直接的な取引を行っていないことから、サプライヤー自身でこれらの業者と連携して紛争に関与していない根拠を示す必要があります。つまり、責任ある鉱物イニシアチブ(RMI)またはその他OECDが認定するビジネスイニシアチブによって確認されている調達元のみを使用することが、サプライヤー取引の条件です。

ステップ2:オンボーディング

事前チェックとリスク評価の結果は、次にサプライヤーオンボーディングのプロセスへと送られます。ヘンケルはサプライヤーに対し、ヘンケルのサプライヤー行動規範および責任ある調達方針に同意することを求めています。ヘンケルのオンボーディングプロセスは、世界的に統一された登録システムに組み込まれており、ヘンケルのサステナビリティ要件を標準化して要約したものです。

ステップ3:初期評価または監査

新たな取引関係を開始するにあたり、新規のサプライヤーは、既存のサステナビリティパフォーマンスの結果を開示するか、あるいは、サステナビリティパフォーマンスについての透明性を確保したアンケートに回答することを求められます。この評価アプローチは、サステナビリティパフォーマンス評価のスペシャリストであるEcoVadisが開発した評価手法を用いており、外部調達に関わる取引先のほとんどに適用されます。このアンケートは、安全、健康、環境、品質、人権、社員基準、および汚職防止の分野における事項を網羅しています。

2021年には、調達規模が比較的小さいサプライヤーを対象として、サービス型ソフトウェアソリューションIntegrityNextを導入しました。このソフトウェアソリューションは、サステナビリティパフォーマンスやリスクに関する簡単な自己評価アンケートに基づいています。 

特定のサプライヤーは、評価に加えて監査を受けます。このプロセスでは、ヘンケルが独立監査企業と協力し、監査で定義された基準への準拠を確認します。ヘンケルの監査は、現場視察(生産拠点など)で構成され、工場の視察と全階級の社員との面談の両方を含みます。

ステップ4:パフォーマンス評価の分析

外部のサステナビリティ専門家、およびヘンケルの購買チームのサプライヤー担当者が、監査結果またはEcoVadisによる評価の結果を分析して、サステナビリティに関する弱点や改善すべき分野を特定します。それと同時に、サプライヤーはそれぞれ異なるサステナビリティリスクレベルに分けられます。評価または監査後に標準化されたプロセスを踏むことによって、サプライヤーは定められた是正措置を正しく実行することができます。重大な不履行を繰り返した場合は、定められたエスカレーションプロセスによって対処され、そのサプライヤーとの取引関係は解除されます。

ステップ5:是正措置と継続的な改善プロセス

監査や評価の結果とは別に、評価対象のサプライヤーに対して、是正措置計画を作成して定められた改善分野に取り組むことを求め、再評価や再監査までの間、サプライヤーとともに是正措置計画の実行の進捗状況を確認します。

ステップ6:再評価/再監査

再評価または再監査の繰り返しによってサプライヤーのパフォーマンスの進捗を監視し、評価、分析、是正措置からなる継続的な改善サイクルを確保します。その結果として得られるサプライヤーのサステナビリティパフォーマンスの進展に関する透明性の高い情報には、デジタルプラットフォームを通じてリアルタイムにアクセスすることができます。

サプライヤーとの取引の開始または終了

私たちは、サプライヤーのサステナビリティパフォーマンスを向上させるため、サプライヤーと密に連携を図っています。特に、研修プログラムや共同プロジェクトなどを通じて、バリューチェーン全体に前向きな変化を起こすことに重点を置いています。2024年中は、戦略的パートナーから、当該サプライヤーとの取引を終了する理由となり得るような違反に関する通知は受け取っておりません。

持続可能なサプライチェーンのための協力

ヘンケルと化学業界の5社は2011年に、 「サステナビリティのための協力―よりよい世界を目指す化学サプライチェーン」(Together for Sustainability—Chemical Supply Chains for a Better World:TfS)イニシアチブを共同で立ち上げました。このイニシアチブは、国連グローバル・コンパクトの原則と  国際化学工業協会協議会(ICCA)の「レスポンシブル・ケア」イニシアチブを基盤としています。TfSは、複雑化するサステナビリティ関連のサプライチェーン管理プロセスの調和を図り、世界中のビジネスパートナーのつながりを最適化することを目的としています。とりわけ、相乗効果が生まれることによって、加盟企業間だけでなく、すべての共通サプライヤーとの間においても、資源をより効率的に使用できるようになり、管理業務を最小限に抑えることができます。

このイニシアチブの主軸となるのは、「1社の監査は全社の監査」という考え方です。サプライヤーは、1件の評価または1件の監査を受けるだけです。監査は、多数の厳選された独立監査法人によって行われます。オンライン評価の場合、TfSはサステナビリティパフォーマンス評価の専門家であるEcoVadisと連携します。マネジメント、環境、安全衛生、労働と人権、倫理的な企業ガバナンスなどの分野についてパフォーマンスが評価されます。2024年、TfSは約20,600件のアクティブなTfS評価および監査を実施しました。同年に約3,200社のヘンケルのサプライヤーがTfSの評価または監査を受けました。TfSメンバーの多くがヘンケルの直接サプライヤーでもあり、こうしたサプライヤーもその取引先の評価や監査を行っています。したがって、ヘンケルではバリューチェーンに沿ったサステナビリティを実践するためのより綿密なアプローチ(Tier N)を実現しています。

2022年には、スコープ3排出量の算定に関する「化学産業のための製品カーボンフットプリント(PCF)ガイドライン」が発表され、TfSイニシアチブの歴史における重要な節目となりました。TfSのメンバーは、TfSのPCFガイドラインが排出量算定に関する国際的なベストプラクティスと整合したものになるよう、グローバルNGO、企業サステナビリティの専門家、化学産業の専門家、および世界経済フォーラム(WEF)や持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)などの組織と協力してきました。ヘンケルは、専門家としてPCFワーキンググループに参加しました。最新版ガイドラインには、化学産業の特殊性を踏まえた既存のPCF算出アプローチが集約されています。これによって将来的には、企業や産業用顧客、コンシューマーが、化学製品による気候への影響を直接比較し評価できるようになります。2024年、TfSイニシアチブはPCF Exchangeの運用を正式に開始しました。これは、サプライヤーと企業が、サプライチェーン全体の炭素に関するデータを生成し、安全に交換することができるよう標準化されたデータプラットフォームです。

TfSイニシアチブにおけるもう1つの重要な要素は、TfSアカデミーです。同アカデミーは個別学習・スキル習得プラットフォームで、TfSメンバー企業とそのサプライヤーに対し、サプライチェーンにおける重要なサステナビリティテーマについての継続的な教育機会を提供しています。学習コースのテーマには、安全衛生、環境、持続可能な調達、労働と人権、管理とガバナンス、TfSに関する情報などが含まれています。すべての学習コンテンツは、TfSの監査と評価による是正措置に結びついています。これにより、評価を受けたサプライヤーに対して、監査結果に直接関連する具体的かつ幅広い学習機会を提供し、継続的な改善の取り組みを支援します。ヘンケルでは2024年末までに、280名を超える学習者がTfSアカデミーの790のコースに登録しました。

サプライヤーとバイヤーの研修・育成プログラム

2024年、ヘンケルはバイヤーおよびサプライヤーの能力・知識の向上に引き続き注力しました。ヘンケルの専門家は、パーム(核)油、温室効果ガス排出、外部委託製造、貿易製品などの重点分野について、調達担当者やサプライヤーを対象に研修を行いました。2024年には、TfSの専門家が5つの言語でさまざまなオンラインセミナーを開催し、2,500名を超える参加者が受講しました。

例年通り、ヘンケルの内部ステークホルダーおよび購買部門の新入社員は、責任ある調達戦略の内容について研修を受けました。この研修では、特にサプライチェーン・デューデリジェンス法を重点的に取り上げました。2024年は、購買部門の社員320名超が幅広い人権デューデリジェンスの取り組みに関する研修を受講し、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスについて学びました。

サプライチェーンのダイバーシティ向上:サプライチェーンダイバーシティプログラム

ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(多様性、公平性と一体性)の向上を推進するため、ヘンケルの購買部門はサプライヤーのダイバーシティ強化を支援しています。この取り組みの一環として、ヘンケルとの取引に関心を持つ認定サプライヤーとのコラボレーション(協働)の機会を増やすため、北米でサプライヤーダイバーシティプログラムを開始しました。このプログラムは、女性が経営する企業や、障害者や退役軍人などマイノリティの人々が経営する企業を対象としています。北米のウェブサイトには当社のサプライヤーダイバーシティチームが作成した登録フォームがあり、多様なサプライヤー候補企業と当社の購買部門が直接つながることができます。サプライヤーダイバーシティチームは、全国マイノリティ・サプライヤー開発協議会(National Minority Supplier Development Council “NMSDC”)、女性およびマイノリティ経営企業(Women-owned or Minority-owned Business Enterprise “WMBE”)といった複数の企業メンバーシップに加えて、サプライヤーのダイバーシティを推進するマッチングイベントに数多く参加しています。このように、ヘンケルは質の高い調達ソリューションと、インクルーシブでダイナミックなサプライヤーベースを組み合わせることを目指しています。私たちは、重要な北米市場で展開する本プログラムによって得た経験を活かし、グローバルな活動を拡大していきたいと考えています。

パートナーとの緊密なコラボレーション(協働)

ヘンケルは、TfSイニシアチブの活動に加えて、消費財業界の企業で構成されるフォーラムAIM-Progressにも参加しています。AIM-Progressの目的は、メンバー企業による持続可能な調達に関する経験の共有と、相乗効果の活用を促すことです。このフォーラムは地域サプライヤーイベントの開催にも力を入れており、バリューチェーン内のサステナビリティパフォーマンスの向上を目指しています。ヘンケルはまた、持続可能な誘導体のための行動(Action for Sustainable Derivatives “ASD”)イニシアチブのメンバーでもあります。これは、パーム油誘導体を取り扱うサプライチェーンの関連企業が集結し、透明性の向上およびNDPE(森林破壊、泥炭地開発、搾取の禁止)原則の遵守を進める取り組みを支援するもので、パーム油産業に前向きな変化をもたらすことを目指しています。